お子さんについて保護者の方から「興味や関心があることは集中できるけれど長く続かない」とか「嫌なことは聴こうとしない」などのお話しを伺うことがあります。嫌なことを聴きたくないという思いは、これは大人も同じです。ですから私達大人としてはそこでカッとしてはいけません。子どもが”何かをしよう”と思うのは言われたからやるのでは決してありません。基本的には子どもは自分で判断し行動しています。基本的には自分でやろう、やりたいと思ったことをやっているだけなのです。
ではどうすればやる気になるのでしょう。子どもにとって「やる気」の原動力は、親や大人が喜んだり悲しんだりすることです。ですから「お片付けしなさい」という命令や「お片付けしないと良い子になれないよ」などの言い方はNGです。子どもにとっては”それがどうした”という感情しかわきません。そうではなく「お片付けしてくれると嬉しいな」とか「悲しい」などという自分の感情を素直に伝えると、子どもの心はそれに反応しやすいようです。幼稚園でも年長や年中のお友達に「年少さん達はまだお片付けが上手じゃないから手伝ってくれると嬉しいな」などと言うと、俄然張り切ってお片付けをやってくれます。子ども自身は親や大人の役に立ちたい、お手伝いをしたい、親の役に立って「認められたい」という無言の欲求がありますので、多くの場合は自分で行動するようになるのです。但し子どもの教育は、これをやれば絶対と言うような正解はありません。年少や年中では、まだまだ生まれ月などによる発達の個人差が大きい時期です。できる子はできるしできない子はできないという状況ですね。そういう時期に「もう年中なんだから」という親の気持ちは理解できますが、しかしできない子にとってそれは大きなストレスになってしまいます。その意味で親が子どもの状態を正しく把握することがとても重要だと思います。
よく「叱ってやらせる」か「褒めてやらせる」ということが議論になります。私は叱ること自体を全く否定するつもりはありません。幼稚園でも本当にいけないことなどについては叱ることがあります。でもそれはただ叱るのではなく、なぜいけないのかを子どもに分かってもらわなければなりません。子どもに理解できるように説明できるなら叱ることも効果があると思います。でももしそうでなければ、子どもは”叱られるから”やるかもしれませんが、なぜ叱られたかなんてことはすぐ忘れてしまいます。その時の子どもはただ”叱られたくない”、”怒られたくない”という気持ちで動いているだけなのですから。ですからそのような叱り方はあまり効果があるとは思えません。ただ叱るのではなく、子どもの「やる気スイッチ」を入れてあげることが大切ということです。自分の子どもの「やる気スイッチ」は何か、お子さんをよく観察することでどうぞそれを見つけて出してあげて下さい。
園長補佐 山川 秀人
【聖学院みどり幼稚園だより 「緑のオリーブ」2021年度No.5 2021年9月発行より】