10月の真夏日が続きどうなることかと思っていましたが、ようやく秋となってきまし
た。すると、真夏には起こらない“秋の花粉症”が出始めて耳鼻科に行くことになりました。
いつもながら長い時間待つことになるので、自然と親子連れの様子に目がいってしまいます。
お母さんの診察の間、看護師さんに抱かれて泣きじゃくっている赤ちゃんが、お母さんに
戻されたとたんに泣き止む姿には、「やっぱりお母さんの存在ってすごい!」と思わされます。
そんな中、1歳児くらいの小さな男の子が泣きながら待合室に戻ってきました。両耳に綿が
詰められているので、患者さんは明らかにその男の子です。痛かったのでしょうか?怖かっ
たのでしょうか?ヒクヒクしていてなかなか泣き止みません。時々お母さんの胸に顔をうず
めて泣き止んだかと思うと、また大泣きの繰り返しです。でも、こんな風に自分で泣き止む
手立てを探す姿に感動しました。しかし、お母さんは何も言わないのです。お母さんも疲れ
てしまったのかもしれません。その後、お母さんは男の子を抱っこしている片手でリュック
サックを開け、スマートフォンを出して見始めました。時間や予定が気になったのでしょう
か?そして、ミニカーを1台出して男の子に見せましたが、泣いている男の子はそれどころ
ではありません。受け取りませんでした。その時、待合室のテレビからにぎやかな笑い声が
聞こえてきました。すると、男の子は振り返り、泣き止んだのです。お母さんは男の子を抱き
上げ、反対向きにし、テレビが見えるようにして終わりました。テレビに救われたのですが、
お母さんの「痛かったねえ。がんばったねえ。」の共感の言葉があったら、気持ちを受け取っ
てもらえたら、男の子はもっと安心できたのではと思ってしまいました。
次に来院したのは、中学生とお母さん。今までかかっていた病院では、治療や経過の説明が
なく、いろいろな病名を言われ、「何が何だかわからない」と怒っています。中学生が呼ばれて、
診察台に座り、お母さんはその横に立って、興奮したように今までの経過を説明していました。
ところが、医師が中学生に触診をしながらお母さんの話をよく聞き始めるとお母さんの声のトー
ンが落ち着いてきたのです。きっと、受け入れてもらった安心感がお母さんを変えたのでしょう。
言葉には、伝え、共感し、受け入れる力があるのだと実感し、子どもたちには、素敵な言葉をか
けてあげられる大人でありたいと思わされました。
主幹 本田 ゆかり
【聖学院みどり幼稚園だより 「緑のオリーブ」2021年度No.6 2021年10月発行より】