新しい生活様式 -「緑のオリーブ」№5 聖学院みどり幼稚園だより-

新しい生活様式

暑い夏を引きずったまま2学期が始まりました。1学期後、残念ですが1名のお子さんが退園されましたが、2学期からは新たに2名の入園者を迎えました。また満三歳児10名が9月より新しい家族として加わりました。しかし、夏の間も新型コロナウイルスの感染拡大は収まらず、何時何処で誰が感染してもおかしくない状況です。そのため、2学期の行事も縮小せざるを得ませんでした。特に年長の「お泊まり会」は単なる思いで作りではなく、毎年これを経験して子ども達が大きく成長することを見てきた者としては、中止ではなく再延期としました。皆様ともご相談しながら今後のことを決めていきたいと思います。
ところで厚労省では新型コロナウイルス感染予防策として「新しい生活様式」の実践例を公表しています。ぜひご確認いただきたいのですが、各自治体やマスコミなどもこのことを受け、コロナ後を含むあるべき新しい生活のスタイルについて様々な議論がされています。このような対策は、感染拡大を防ぐためにはやむを得ないことではありますが、しかし内容によっては多少の違和感を覚えるものもあります。私たちは子どもの頃から「人と話すときは相手の目(顔)を見るように」と言われてきました。顔の表情を通して互いの感情をよりよく理解するためです。また、食事をするときは正対せず横並びでなるべく会話をしないようにとか、人と接しないために不要不急な外出は避けるなど、これまでの私たちの行動を大きく変えざるを得ない内容も含まれます。もし、このような生活スタイルが将来の生き方の基本となるならば、人間社会のあり方そのものが大きく変わっていく可能性を含んでいるのではないでしょうか。

一般に「人は人と同じ時間や空間を過ごす」ことに喜びを感じます。また、本来文化的な活動は社会的距離を縮めることを求めるものです。家族の団欒や友人の語らいなど、人は独りぼっちで生きていくのは難しいのです。しかし、現在のこのような状況を背景として、私たちがお預かりしている未来を生きる子ども達には、今、何をどう教え、伝えていくべきなのでしょう。人本来の生き方からすると自粛を求められる面を持つ新しい生活様式が、今後の標準的なスタイルとして本当に定着していくのでしょうか。

幼稚園や保育所の現場というのは『密』とならざるを得ない面があります。子ども同士のみならず、保育者が絵本を読むと必ず膝に座ろうとする子がいます。泣いている子がいる時は抱っこして安心させます。一人では動き出せない子の手を引いて園内を散歩することもあります。大人にとっての自粛は社会生活を営む上である程度やむを得ないことでしょう。しかし幼い子ども達にとって、新しい生活様式が人間としての成長や発達にどのような影響を与えるのか未知の部分が多いのです。私たちは、そのような不安を持つことなく過ごせる世界が一刻も早く戻ってくるようにと願い、共に協力し合いたいと思います。

園長 山川秀人
【聖学院みどり幼稚園だより 「緑のオリーブ」№5 2020年9月4日発行より】